「嫌だ、高橋さん。部下を泣かせたの?」
「本当だ。あの子、泣いてるわよ」
「まさか。きっと、またいつものように女の方が言い寄って撃沈されたか、我が儘言って怒られたんでしょう?」
「そうよね。高橋さんは優しいから……」
周りに座っている人達の、そんなヒソヒソ話す声が聞こえた。
このままでは、高橋さんに迷惑が掛かってしまう。
「大丈夫か? やっぱり具合悪いのか?」
高橋さんがハンカチを差し出しながら、心配そうにこちらを見ていた。
うわっ。どうしよう。高橋さんに、心配掛けてしまっている。もう覚悟を決めて、仕事終わってから何も予定はないし、素直にここはハンカチを受け取ろう。
「はい」
「やっぱり具合悪いのか。大丈夫か?」
「あっ、いえ、そうじゃなくて。あの……仕事終わってから、その……時間あります」
差し出されたハンカチを受け取り、ギュッと握りしめながら声を絞り出すように言った。
「ああ、そっちの『はい』か」
「はい……」
「わかった。それじゃ、一足先に戻るから」
「えっ? あっ、はい」
高橋さんは、トレーを持って立ち上がると、そう言って先に行ってしまった。
ふと見ると、私の手に握りしめられている高橋さんのハンカチが、無意識に力を込めていたのだろう。クシャクシャになってしまっていた。そっと手の力を緩めてハンカチを見ると、ネイビーカラーの無地のハンカチの角に馬の刺繍が施されていた。洗って返さなきゃと思い、化粧ポーチの入っていた小さなトートバッグにしまうと、仄かに柑橘系のいい香りがした。
高橋さんの香りがする。何の香水だろう? コロンかな?
「本当だ。あの子、泣いてるわよ」
「まさか。きっと、またいつものように女の方が言い寄って撃沈されたか、我が儘言って怒られたんでしょう?」
「そうよね。高橋さんは優しいから……」
周りに座っている人達の、そんなヒソヒソ話す声が聞こえた。
このままでは、高橋さんに迷惑が掛かってしまう。
「大丈夫か? やっぱり具合悪いのか?」
高橋さんがハンカチを差し出しながら、心配そうにこちらを見ていた。
うわっ。どうしよう。高橋さんに、心配掛けてしまっている。もう覚悟を決めて、仕事終わってから何も予定はないし、素直にここはハンカチを受け取ろう。
「はい」
「やっぱり具合悪いのか。大丈夫か?」
「あっ、いえ、そうじゃなくて。あの……仕事終わってから、その……時間あります」
差し出されたハンカチを受け取り、ギュッと握りしめながら声を絞り出すように言った。
「ああ、そっちの『はい』か」
「はい……」
「わかった。それじゃ、一足先に戻るから」
「えっ? あっ、はい」
高橋さんは、トレーを持って立ち上がると、そう言って先に行ってしまった。
ふと見ると、私の手に握りしめられている高橋さんのハンカチが、無意識に力を込めていたのだろう。クシャクシャになってしまっていた。そっと手の力を緩めてハンカチを見ると、ネイビーカラーの無地のハンカチの角に馬の刺繍が施されていた。洗って返さなきゃと思い、化粧ポーチの入っていた小さなトートバッグにしまうと、仄かに柑橘系のいい香りがした。
高橋さんの香りがする。何の香水だろう? コロンかな?

