新そよ風に乗って ② 〜時の扉〜

額を抑えて涙目になりながら神田さんを見ると、腕組みをしながらこちらを見ていた。
「私が、協力してあげる」
「えっ?」
「陽子に、私が協力してあげる。前途多難で一筋縄じゃ行かなそうな野郎だけど、私が出来る最大限のキューピット作業をして、アンタの恋を成就させるから」
「神田さん……」
「まずは、ハイブリッジの身辺調査から入るから。こう見えても社内情報には長けてる方だからね。陽子は、自分の出来る範囲でもっとアピールすること」
「アピール?」
「そう。陽子の存在感を、もっともっと示さないと駄目。本配属で他の子とチェンジとか、絶対嫌でしょう?」
「ほ、他の子とチェンジ?」
本配属で、会計じゃなくなるなんて嫌だな。
「残念だけど、世の中、コネクションがものを言うのよね。だから、コネでいくらでもポジションは奪えるわけよ。特にうちの会社とか、大手は社員数も多いから日常茶飯事。」
「そんな……」
「だから、もっと自分をアピールして存在感示さないと駄目。動物の親子と、同じ原理よ」
「動物の親子と、同じ原理?」
「ほら、よく言うでしょ? 生まれてきた動物が最初に見た生き物が、自分の親だと思ってしまう。所謂、刷り込みってやつよ。それとは少しニュアンス違うけど、最初に仮配属で来た陽子が一番だよって思わせればいいのよ」
そんなに上手く行くのかなあ? 半信半疑で神田さんの話を聞いていた。
「陽子の任務は明日、ハイブリッジに言うこと」
「な、何を?」
「本配属でも、自分は会計がいいってアピールするの」
「ええっ! そんなこと言えない……」
「そんな弱気でどうするの? ライバルは沢山いるのよ? だけど、陽子は他のライバルより有利な位置にいるんだから、それをもっと活かさなきゃ。わかった? その後のことは、私がまた計画するから。まずは、本配属で会計に残ることが先決」
話が思いも寄らない方向に進んでしまい、何故か明日、高橋さんに本配属の件で話さなければならなくなってしまった。果たして、ちゃんと言えるだろうか?
しかし、翌日。ちょうど、休憩時間で高橋さんと一緒になったので、何とか話を切り出そうとタイミングを狙っているが、緊張のあまり、殆ど食事も出来ずにいた。
「どうした? 具合でも悪いのか?」
すると、逆に高橋さんに心配されてしまった。
「あっ、いえ……。だ、大丈夫です。あの……」
今がチャンスかもしれない。
「何?」
「あの……。本配属の件なのですが……」
「……」
どうしよう。ドキドキして、上手く言葉が出て来ない。