明良さんは、この前、会った時にも別れ際、高橋さんには、何も話していないと言っていた。だけど……。
「でも、高橋さんは何か知っているようでした。救急車に乗っている時、私は何も言っていないのに、直ぐに京葉病院でいいかと聞かれました。それって……」
「多分、俺が空港で会った時、独り言のように、矢島さんのことを知っていると言ったからかもしれない」
明良さん。
「だから、何も言わなくても頭の回転の速い貴博のことだから、何かを感じ取って京葉病院と言ったのかもしれないね。でも、断じて医者は患者さんの病状や病歴等について、親族以外に話したりすることはない。守秘義務があるからね。だから、例え患者さんの親戚の人から聞かれたからといって、患者さん、若しくは患者さんが判断出来ない場合、親御さんの承諾が得られなければ話すことは出来ない。そういうものなんだよ」
「そうなんですか……」
高橋さんは、明良さんから聞いていなかったけれど、それでも何かを感じ取って京葉病院に搬送してくれるよう、救急隊の人に頼んでくれたんだ。だとすると……。やはり、高橋さんには、正直に話さなければいけない。でも……。
「何か、抱え込んでいるみたいだね?」
「えっ……」
明良さんは、点滴のパックに一度、目をやると、ベッドテーブルの上に置いてあったレントゲン写真の入った茶色い袋を手に取った。
「どんなに医学が進歩したとしても、人の心まではレントゲンには写らないんだ」
明良さん……。
「幸い、当直明けで午前中は時間が空いているし、点滴が終わるまでまだまだ時間はあるから」
「明良さん……」
明良さんは、お医者さんだからかな。近くに居てくれるだけで何だか安心出来るし、患者の心理を読み取るのが上手いというか、話しやすい雰囲気を作り出してくれているような気がする。
「私……。持病があることを黙って入社したんです」
「……」
いつも頭の片隅にあった。けれど、敢えて忌避して来たことを口にした途端、砂の城が一瞬の小波によって音もなく崩れ落ちたようだった。
「でも、高橋さんは何か知っているようでした。救急車に乗っている時、私は何も言っていないのに、直ぐに京葉病院でいいかと聞かれました。それって……」
「多分、俺が空港で会った時、独り言のように、矢島さんのことを知っていると言ったからかもしれない」
明良さん。
「だから、何も言わなくても頭の回転の速い貴博のことだから、何かを感じ取って京葉病院と言ったのかもしれないね。でも、断じて医者は患者さんの病状や病歴等について、親族以外に話したりすることはない。守秘義務があるからね。だから、例え患者さんの親戚の人から聞かれたからといって、患者さん、若しくは患者さんが判断出来ない場合、親御さんの承諾が得られなければ話すことは出来ない。そういうものなんだよ」
「そうなんですか……」
高橋さんは、明良さんから聞いていなかったけれど、それでも何かを感じ取って京葉病院に搬送してくれるよう、救急隊の人に頼んでくれたんだ。だとすると……。やはり、高橋さんには、正直に話さなければいけない。でも……。
「何か、抱え込んでいるみたいだね?」
「えっ……」
明良さんは、点滴のパックに一度、目をやると、ベッドテーブルの上に置いてあったレントゲン写真の入った茶色い袋を手に取った。
「どんなに医学が進歩したとしても、人の心まではレントゲンには写らないんだ」
明良さん……。
「幸い、当直明けで午前中は時間が空いているし、点滴が終わるまでまだまだ時間はあるから」
「明良さん……」
明良さんは、お医者さんだからかな。近くに居てくれるだけで何だか安心出来るし、患者の心理を読み取るのが上手いというか、話しやすい雰囲気を作り出してくれているような気がする。
「私……。持病があることを黙って入社したんです」
「……」
いつも頭の片隅にあった。けれど、敢えて忌避して来たことを口にした途端、砂の城が一瞬の小波によって音もなく崩れ落ちたようだった。

