新そよ風に乗って ② 〜時の扉〜

気持ち悪さと戦っているところで声を掛けられ、静かに目を開けると、ベッドの脇に明良さんが立っていた。
「大丈夫? 顔色が悪いな」
「すみません。何だか、気分が悪くて……」
すると、明良さんはパルスオキシメーターが、きちんと指に挟まっているかを確認すると、直ぐさまベッドテーブルの上に置いてあったカルテを広げ、ページを捲っていた。
「気分が悪くなったのは、点滴を始めてから?」
「はい」
明良さんのカルテのページを捲る手が止まり、カルテをベッドテーブルの上に開いたまま置くと、直ぐに点滴の容器に貼ってあるラベルに目を通した途端、私の左腕に貼られていたテーピングを外すと、いきなり点滴の針を抜いた。そして、ナースコールを押した。
「どうしましたか?」
「消化器内科の武田です。至急、高山先生を呼んで下さい」
どうしたんだろう? 何か、あったんだろうか?
「あの……」
「大丈夫。今、点滴を換えるから。消化器系の弱い人に、この点滴は合わないことが多いんだ。矢島さんにも合わなかったから、気分が悪くなっちゃったんだと思う」
「そうですか」
点滴が合わなかったから、心臓がドキドキしたりしてたんだ。
「何でしょう? 忙しいんだけど」
先ほど、診てくれた医師が姿を見せた。話しぶりからいって、明良さんより上の人なのかもしれない。
「お手間は取らせません。確認だけ、させて下さい。消化器内科のカルテをご覧になりましたか? また、呼吸器の方のカルテの最初の方にもアテンションしてあると思うのですが、この患者さんには、ネオフィリン系の薬は避けるようにと記載してありますよね? それなのに、この点滴を処方された所以は、何か意図があってのことでしょうか?」
「ああ、すみません。見落としてたみたいだ。それじゃ、消化器の方で診てよ」
先ほどの医師はそう言うと、バツが悪いのか、直ぐに行こうとした。
「高山先生」
「はい」
「患者さんに、謝りましょうよ」
「ハッ?」