新そよ風に乗って ② 〜時の扉〜

もしかすると、偉い人のところに来たお客様かな。
エレベーターが一緒になってしまうと、何となく気まずいから早く行こうと思い、真っ直ぐ前を向いたまま、その車の横を足早に通り過ぎてエレベーターホールに入ってエレベーターのボタンを押した。
だが、こんな時に限って地下2階まで来る2基のエレベーターは、どちらも上層階に向かっていて悲劇的に来る気配がない。
すると、後ろで車のエンジンを切ったのだろう。エンジン音がしなくなったので、何気なく後ろを振り返ると、エレベーターホールが明るいので乗っている人の姿は窓ガラス越しなのでハッキリとは見えなかったが、車の運転席のドアが開いた。
綺麗に磨かれた靴。
駐車所に降り立った人の革靴が、間引きされた照明にも関わらず、黒っぽい革靴のつま先が光って見えた。
エッ……。
靴に見とれながら視線を上に向けると、そこには高橋さんが立っていた。
「久しぶりだな」
「高橋さん……」
エレベーターホールに向かって、高橋さんが近づいて来る。
あれほど待っていた。2年前のあの日から、どれほど逢いたかったかわからない。
体中の力が抜けて、バサッと、持っていたファイルを床に落としてしまった。
「どうした?」
「えっ? あっ、す、すみません」
呆然としていると、落としたファイルを高橋さんが拾って差し出してくれていた。
「あ、あの……。どうされたんですか? 一時帰国ですか?」
「ん? さあ、どうされたんだろうな」
「高橋さん?」
「フッ……」
高橋さんが、何も言わずに微笑んでいる。
「あの……」
「変わってないな」
「えっ?」
「いや、何でもない。そう言えば、貯金は貯まったか?」
貯金?