新そよ風に乗って ② 〜時の扉〜

繰り返し流される映像に目を背けたくなるのと同時に、これは映画のワンシーンなんじゃないのだろうか? と、錯覚してしまうほど信じられない光景だった。
テレビの画面を観ながら歯を食いしばり、両手で拳をギュッと作りながら、上手く呼吸が出来なくて涙が溢れていた。
「た、高橋さん……ゴホッ……ゴホッ、ゴホッ……」
左手を思わず胸に当てて、落ち着こうと必死になっているところに携帯がテーブルの上で振動しているのがわかり、咄嗟に立ち上がって急いで電話に出た。
「も、もしもし」
「あっ。もしもし、陽子?」
「ま、まゆみ」
「テレビ観てる?」
「う、うん。どうしよう……」
「とにかく、落ち着こう。陽子は人事。私は総務。お互い緊急の場合は、会社に来るように言われてたよね?」
「う、うん」
航空会社に勤務している以上、どうしても避けて通れない問題がある。それは、ハイジャックと飛行機事故だ。どちらもあってはならないものなのだが、万が一に備えて、緊急招集は各自ニュースを見て会社の警備本部に連絡をし、自宅待機なのか、ただちに出社なのかを確認する。今回の場合、自分の会社の飛行機ではないけれど、どう判断もしてよいのか分からない。しかし、とても重大な飛行機事故が起きてしまったことには変わりない。
「今から会社に連絡してみるから、陽子は待ってて。また連絡するから」
「わ、わかった。お願いします」
一旦、まゆみの電話を切って、また掛かってくるのを待っていたが、それがもの凄く長く感じられる。携帯を握りしめて、気持ちを落ち着かせようとミネラルウオーターを飲もうとして冷蔵庫を開けてペットボトルを取り出したが、そのまままた元の位置に戻して冷蔵庫の扉を閉めた。
もし、もしも、高橋さんがあのビルに……。
「うわっ」
左手に持っていた携帯がいきなり震え出したので、驚いて慌てて電話に出た。
「もし、もしもし」
「陽子? 落ち着いて」
「う、うん」