新そよ風に乗って ② 〜時の扉〜

人事部と総務部は同じフロアにあって、神田さんの席から私の席はよく見えるらしい。反対に、私の席からは神田さんの席は後ろを振り返らないと見えないので、殆ど見ることが出来なかった。
「このまゆみ様は、洞察力とSPIに関しては和製ハンターと呼ばれてるぐらいなんだから、視力だけはいいんだな。誤魔化して、何かやろうとしても無駄よ。全部、お見通しだから」
神田さんは、本当にハッキリものを言う人だけれど何か憎めない。きっと私にないものを、たくさん持っているからだと思う。
「自分の今出来ることに最善を尽くせって、言われたんでしょう?」
「うん……」
「それなら、その約束は守らないとね」
「うん」
「好きなんでしょう? ハイブリッジのこと」
「えっ? ち、違うわよ。そ、そんなんじゃないって」
「じゃあ、どんなんよ?」
「そ、それは……」
間髪入れずに神田さんに突っ込まれ、返答に困ってしまった。
「まっ、陽子が違うっていうんだったら、違うんでしょう」
「も、勿論よ」
「ちょうどお茶もなくなったし、そろそろ帰るよ」
「うん」
高橋さんが言ってくれた言葉が励みになっていたが、それが時に現実を突きつけて来ていた。高橋さんが日本に居ないという現実を……。
毎日、何が不満というわけでもなく、それでも何かが足りなかった。けれど、それが何なのかが分からなかったが、それでも神田さんが同じ事務所の中に居てくれたお陰で、人事部に異動してから時間が合えば一緒にランチをしたり、一緒に退社も出来たりして、とてもそれはそれで楽しい社会人生活を送れていた。