「ありがとうございます。凄く……凄く勉強になりました」
「前にも言っただろう? 最初から何でも出来たら、俺達の立場がなくなるって」
「はい」
長机の上で両手を組みながら、高橋さんが笑っている。この穏やかな時が、ずっと続けばいいのに。忘れかけていた、あのまま会計に居たかったという思いが蘇っていた。けれど、この先に待っているのは……高橋さんの出向。
でも、高橋さんは辞令をもらって、動揺はしなかったのだろうか?
「高橋さん。あの……」
「はい」
ジッと、私の目を見て返事をしてくれた高橋さんを見たら、何だか聞けなくなってしまった。
「あっ、いえ、何でもありません。そ、それじゃ、分からない点がございましたら、浦田さん宛にお電話下さい。よろしくお願いします。し、失礼します」
うわっ。
お辞儀をして椅子を中に入れてドアの方へ向かおうと体勢を変えようとしたところで、立ち上がった高橋さんに長机越しに腕を掴まれていた。
驚いて振り返ると、私の腕を掴んだまま高橋さんが微笑んでいる。
「まだ、話がある」
エッ……。
「な、何でしょうか?」
「フルコースの食事代、貯めとけよ?」
「えっ?」
「帰ってきたら、必ずご馳走してもらうから」
「は、はい。毎日コツコツ貯めておきますので、早く帰って来て下さい。あっ……」
慌てて口を押さえたが、遅かった。
どうしよう……。つい、本音を口走ってしまった。
「分かってると思うが、出張じゃないからな?」
「は、はい。すみません。つい、その……」
言わなければ。
今、言わなければ、もう言えるチャンスがないかもしれない。ちゃんと言わないと。伝えないといけない。
「高橋さん。この度は……ご栄転、おめでとうございます」
言えた!
「ありがとう」
泣いてしまいそうで、顔を上げるのが怖い。
「前にも言っただろう? 最初から何でも出来たら、俺達の立場がなくなるって」
「はい」
長机の上で両手を組みながら、高橋さんが笑っている。この穏やかな時が、ずっと続けばいいのに。忘れかけていた、あのまま会計に居たかったという思いが蘇っていた。けれど、この先に待っているのは……高橋さんの出向。
でも、高橋さんは辞令をもらって、動揺はしなかったのだろうか?
「高橋さん。あの……」
「はい」
ジッと、私の目を見て返事をしてくれた高橋さんを見たら、何だか聞けなくなってしまった。
「あっ、いえ、何でもありません。そ、それじゃ、分からない点がございましたら、浦田さん宛にお電話下さい。よろしくお願いします。し、失礼します」
うわっ。
お辞儀をして椅子を中に入れてドアの方へ向かおうと体勢を変えようとしたところで、立ち上がった高橋さんに長机越しに腕を掴まれていた。
驚いて振り返ると、私の腕を掴んだまま高橋さんが微笑んでいる。
「まだ、話がある」
エッ……。
「な、何でしょうか?」
「フルコースの食事代、貯めとけよ?」
「えっ?」
「帰ってきたら、必ずご馳走してもらうから」
「は、はい。毎日コツコツ貯めておきますので、早く帰って来て下さい。あっ……」
慌てて口を押さえたが、遅かった。
どうしよう……。つい、本音を口走ってしまった。
「分かってると思うが、出張じゃないからな?」
「は、はい。すみません。つい、その……」
言わなければ。
今、言わなければ、もう言えるチャンスがないかもしれない。ちゃんと言わないと。伝えないといけない。
「高橋さん。この度は……ご栄転、おめでとうございます」
言えた!
「ありがとう」
泣いてしまいそうで、顔を上げるのが怖い。

