新そよ風に乗って ② 〜時の扉〜

エッ……。
その言葉に顔を上げて、高橋さんを見た。
「それは、その……。上手く説明出来なかったので……」
「いいか? 座って」
高橋さんが長机越しに中腰になって、左手で私の右肩を押して座らせた。
「俺は、矢島さんの今の説明で理解出来たつもりでいる。もし、分からないことがあったら浦田さんに連絡するから大丈夫だ。ただ、こればかりは人それぞれだから、ある人はAの箇所が、またある人はBの箇所がよく理解出来なかったということも有り得る。但し、それもその相手の聞く態度にもよってくる。きちんと話を聞いてくれていれば理解出来ることを、早合点したり、話の途中で違うことを考えていて聞き損なっていたということだって考えられる。きちんと筋道を立てて説明をして、説明を終えた時点で質問や疑問点を相手に問い掛け、質問がなかったり、あったとしてもその疑問点を解決出来たとしたならば、説明した側が全責任を負うことはない。もちろん、最後まで誠意を持って説明することは大切だ。しかし、聞く側の聞く姿勢というもの大事だということだ。説明の内容で、いかに相手を引き込めるか。相手が、説明を理解しようと努力する姿勢。この到達点が合致すれば、話というのはスムーズに進む。矢島さんには説明責任があるというプレッシャーも掛かっているかもしれないが、今回のような場合、出向者は、ただでさえ辞令を受け取って動揺や混乱もしているというハンディを持っているということも踏まえた上で説明出来たのならパーフェクトだ」
高橋さんが穏やかな笑みを浮かべながら話してくれたことは、恐らく、これが日本に居る間の最後になってしまう話かもしれなかった。
「この先、矢島さんが、今、そこにあるその表面上だけの物理的なものだけに囚われるだけでなく、相手の立場に立った捉え方が出来たらいいと思う。もう少し、自分に自信を持て。そうしないと、相手にも動揺を与えることにもなりかねないからな」
高橋さん……。