新そよ風に乗って ② 〜時の扉〜

「国内組の方々の書類セット出来まして、チェックも終わりました」
「そう。それじゃ、今度は海外組ね」
「は、はい」
やっぱり、何だか緊張してしまう。
「海外組の人達は、国内組の人達の引っ越し費用の書類がこっちに変わって、それと事前に現地に行かれることが1回か2回発生してくるから、それを出張代として仮払い申請を出してもらうから、その処理の仕方は経理に居たからよく知ってると思うけど、その仮払い申請の用紙も一緒に付けてくれる?」
「はい」
「それから引っ越し業者は出向先の国によって違ってくるから、この表を見て引っ越し業者の見積もりパンフレットを入れてあげてね」
「はい」
そう言って浦田さんが、国別引っ越し業者一覧表を貸してくれた。
「あと、海外組の人は、現地支給の給与振り込み口座用紙も必要だから。国内組の人は今まで通りの給与口座でもいいし、出向先で新たに口座を設ける場合はいつも私達がやっている手続きと同じで給与振り込み口座変更届でいいんだけれど、海外組の人は国内で出るお給料とは別に現地でもお給料が出るから、その現地の銀行口座か、もしくは今まで通りの給与振り込み口座でも構わないというのであればその口座を書いて貰って。いずれにしても、必ず現地支給の給与振り込み口座用紙を提出してもらわないといけないから」
「はい」
「それじゃ、もう少しで辞令交付が始まるから、それが終わったら次どうするか、また説明するけれど、それまで分からないことがあったら聞いてね」
「はい。ありがとうございます」
避けるようにして、敢えて高橋さんの必要書類を揃えるのをいちばん最後にしていた。それでも、嫌が負うでも高橋さんの書類を揃える時が来てしまった。
名前を見ただけで、胸が苦しくなってしまう。それでも仕事だからと、何度も自分に言い聞かせて書類を集め、封筒の宛名に高橋さんの名前を書いた。
海外事業部付 (経理部会計監査) 高橋貴博様
この文字を書いている私は、いったい何をしているのだろうと心の中の違う自分が問い掛ける。高橋さんの宛名を書いているのに、何故か哀しい。