新そよ風に乗って ② 〜時の扉〜

「いえ……すみません」
「何がだ?」
「その……。あの、やっぱり送って頂かなくても……」
「行くぞ」
高橋さんは私の紙袋を軽々と抱えると、自分のバッグと鍵板を持ってドアの方へと歩き出したので、慌てて後に続いた。
こうして、高橋さんの後ろを歩くのも今日で終わりなんだ。
そう思ったら急に寂しさと哀しさが溢れそうになって、慌てて天井を見上げた。
「どうした?」
エッ……。
「い、いえ、何でもありません」
ドアの手前で急に高橋さんが振り返ったので、上を向いていたのがバレてしまい、焦って急いで前を向いた。
IDカードをスリットしてエレベーターに乗って一階まで行くと、高橋さんが警備本部に経理の鍵板を返して戻ってくるまでの間、エレベーターを開けて待っていた。この時間は、もう殆どの人が退社しているため、エレベーターの稼働率も低い。
「お待たせ」
高橋さんが直ぐに戻ってきて地下2階の駐車場へと向かい、地下2階に着いてエントランスを出ると駐車場の照明は間引きされていて、ほぼ真っ暗だった。
「此処で待ってて」
「い、いえ、一緒に行きます」
すると、高橋さんが不思議そうな顔をしたが、何も言わないまま暗い駐車場内を歩き出したので、怖いから急いで後ろに続いた。
本当は待っていても良かったのだが、最後だから出来るだけ一緒に歩いていたかった。でも……。このまま高橋さんの車に乗って家まで帰ったら、本当に辛くなるような気がする。私は欲張りだから、送ってもらったことをこれから先も思い出して、その想い出が哀し過ぎて苦しくなるだけなんじゃないだろうか。
やっぱり1人で帰ろう。
車の前まで行ってエンジンを掛けてライトを点けると、高橋さんが助手席のドアを開けてくれた。