新そよ風に乗って ② 〜時の扉〜

「荷物だったら、さっき言ったとおり、月曜日に運ぶぞ?」
「そうだよ、矢島さん。そんな慌てて片付けなくても……」
「あっ、ありがとうございます。でも要らないものも結構あるので、整理して行きたいですから」
1ヶ月ちょっとしか居なかったのに、机の引き出しの中には色々なものが入っていた。会社からの会報や組合からのお知らせ。経理の連絡事項等、もう用がなくなってしまったものも沢山あったが記念に取っておこうと思い、社外持ち出し厳禁でないものは、大きな紙袋に入れて家に持って帰ることにした。
夢中で整理していると、途中で中原さんが先に退社するということだったので、お世話になったお礼を言って握手を交わした。その後、高橋さん2人になってしまったが、気にせず荷物の整理を続け、終わって時計を見ると19時近かった。
やっと終わったと思えたが、一息等ついてもいられない。早く帰らなきゃ。でもその前に……。
「高橋さん。短い間でしたが、色々、お世話になりました。本当に、ありがとうございました」
高橋さんの席の隣に立って挨拶をすると、高橋さんも椅子から立ってくれた。
「こちらこそ、会計の仕事をしてくれて、ありがとうございます」
「いえ、そんな……何もお役に立てなくて、ご迷惑ばかりお掛けして、申し訳ありませんでした。」
私は、会計の仕事は不向きだったんだもの。高橋さんや中原さんに、迷惑をかけてばかりで……。
「今日は、真っ直ぐ帰るのか?」
「えっ? あっ、はい」
「その荷物……。送っていくぞ」
エッ……。
う、嘘。 それは困る。もう優しくしないで、高橋さん。
「い、いえ、大丈夫です。すみません、お、お先に失礼します」
急いで席に戻り、バッグを持って紙袋を持とうとしたが、先に高橋さんに紙袋を持たれてしまった。
「あっ、あの、本当に大丈夫ですから。どうぞ、お仕事続けられて下さい」
「もう、終わってる」
はい?
「そ、そうですか。お疲れ様でした。あの……」
「何だ?」
右手を差し出して紙袋を返してもらおうとしたが、逆に聞き返されてしまっている。
「あの、紙袋を……」
「事務所の鍵締めて帰るから、少し待ってろ」
「でも……」
高橋さんが紙袋を持ったままパソコンの電源を切り、コピー機や各種電源を素早く確認して廻ると、後ろのロッカーからジャケットを出して羽織った。
「お待たせ」