新そよ風に乗って ② 〜時の扉〜

片付け終わって立ち上がりながら、中原さんにこっそり聞いてみることにした。
「何?」
そんな中原さんもつられてか、小声になっている。
「私、何もしてないのに、一緒に食事に行ってもいいのでしょうか?」
「何で?」
「決算もやっていませんし、予算だって……」
すると、中原さんは微笑みながら私を見ていた。
「そんなこと、関係ないんじゃない?」
「えっ?」
関係ないって……。
「関係ないだろ」
すると、中原さんの後ろから高橋さんの声が聞こえた。
「そんな今から、予算も決算もこなされちゃったら、中原も俺も立場がない」
高橋さん。
「此処に居る以上、共に笑い、共に苦しみ、共に泣く。二番目と三番目は、なるべくさせたくないが、苦楽を共にするとはそういうことなんじゃないのかな」
「高橋さん……」
「さあ、電話で誰かに捕まる前に帰るぞ」
「は、はい」
周りを見ると、殆どの社員が退社していた。
残っているのは、部長と課長と、後はいつも残っているおなじみのメンバーだけ。
「お先に、失礼します」
部長に向かって、聞こえるように大きな声で高橋さんが挨拶すると、部長が何だか驚いたように手を挙げてくれていた。
高橋さんが他の人達より先に帰ることは、本当に珍しいのかもしれない。いつも遅くまで残っているらしいから。
高橋さんの車に乗って、会計の三人で食事に行く。何か、このメンバーで行動するのって、好きだな。私には、とても居心地が良かったりする。
「今日は、どちらに……」
「そうだな。三人だから中華でどうだ?」
「いいですね、中華」
「矢島さんも中華でいい?」
「は、はい」
「好き嫌いあったら、今のうちに遠慮なく言っておいた方がいいぞ。人間嫌いなものや苦手なものを食べさせられるほど、苦痛なものはないからな」
「そうだよ、矢島さん。遠慮なく言った方がいいから」