新そよ風に乗って ② 〜時の扉〜

折原さんが独り言のように何か言っていたが、よく聞き取れず、そのまま眠りの沼から這い上がれずに落ちていったのだった。

「二日酔いの目覚めは、どう?」
「いたたたた……。頭痛いです」
カーテンが開いて眩しくて目を開けると、折原さんがベッドの脇に座っていた。
「起きられそう?」
「はい」
起き上がってベッドに座ったまま両足を床に降ろしたが、その動作だけで頭に響く。
「まだ早いから、シャワー浴びてきたら? スッキリするから」
「は、はい。そうします」
静かにベッドから降りて、バッグの中からお風呂セットを取り出してバスルームへと向かった。
服を脱ぎながら鏡に映った自分の顔を見て、ゾッとした。
酷い顔……。
メイクも落とさずに、寝てしまったのだろう。とれかかったメイクと飲み過ぎだろうか? 目も腫れぼったく、顔も浮腫んでいる。どれだけ飲んだのだろう? ビールを中原さんと飲んだのは覚えているが、その後、どうなったのか……。何も覚えていない。どうやって、部屋まで帰って来たんだろう?
元々、お酒は強くないので殆ど飲まないのだが、昨日は何故か飲んでしまったみたいだ。
何で? 思い出せないままシャワーを浴びて、髪の毛を乾かしている時、ふと思い出した。
そうだ。神田さんと同期の部屋に行ったら、近藤さんに歓迎されなくて……。それで宴会場に戻ったら、高橋さんが女性達と楽しそうに飲んでいて、それで中原さんと飲み始めたんだ。でも、その後の記憶が……ない。
どうしても思い出せずバスルームから出て、真っ先に折原さんに話し掛けた。
「あの、折原さん。昨日、私……どうやって部屋まで帰ってきてましたか?」
「ええっ? もしかして、覚えてないの?」
黙って頷くと、折原さんが驚いた表情を浮かべていた。
「はい……。宴会場に戻ってきて、中原さんとビールを飲み始めたところまでは覚えているんですけれど、その後のことがどうしても思い出せなくて」
「じゃあ、高橋に絡んでたことも?」
「ええっ? た、高橋さんに絡んでたって、私がですか?」
「他に誰が居るのよ?」
折原さんが、わざと目を細めて冷ややかな視線をこちらに向けた。
「そ、それもそうですよね……って、本当に私、高橋さんに絡んでいたんですか?」