新そよ風に乗って ② 〜時の扉〜

高橋さんの声のトーンが、急に低くなった気がした。
「俺は……」
何? 高橋さん。何を言おうとしているの?
「俺は、お前……」
「居た!」
エッ……。
「捜しちゃったわよ。此処に居たんだ」
「ああ、悪かった」
折原さんだ。
「中原。Thank you!」
「いえ、遅くなってすみません」
「どうしたって? 矢島ちゃん。酔っぱらってるらしいじゃない」
「折原さーん。そんなことないですよお。私、酔ってなんかいないですからあ」
「あらら、これじゃ、高橋もお手上げだわね」
「折原さん。私、本当に酔ってないですよお。そういう折原さんだって……。お酒の匂いが……」
折原さんの体に近づき、クンクンと匂いを嗅ぐとお酒の匂いがした。
「矢島ちゃん。あなたは犬かい?」
「折原。部屋まで俺がおぶっていくから、あと頼むな」
「あの、私一人で歩けますよお」
「了解」
「あっ、それなら俺が……」
何だか、私の言葉はスルーされている感じで、中原さんまでもがそんなことを言い出した。
「いいのよ。高橋がおぶった方が」
「ですが……」
「この折原がいいと言ってるんだから、それでヨシ!」
「はあ……」
有無を言わせない折原さんの態度に、中原さんは大人しく引き下がるしかなかったみたいだ。
「ほら、両手を俺の首にまわせ」
「いえ、本当に私、一人で歩……」
「つべこべ言わずに、おんぶされる。よいっしょ」
「うわっ。お、折原さん」
いきなり折原さんが、担ぐようにして高橋さんの背中に私の体を移動させた。
凄い力……。
「相変わらず折原は、鍛えてるのか?」
「ううん。最近は全然」
鍛えてる? 最近は全然?
「あっ、俺も誰かに聞きましたけど、折原さんは柔道黒帯なんですよね?」
く、黒帯? 折原さんが?
「実際、何段なんですか?」
「何段? 黒帯になれば、みんな一緒よ」
「一緒って……」
中原さんが、あまりにもキッパリと言い切った折原さんの言葉に唖然としながら呟くように言っている。