新そよ風に乗って ② 〜時の扉〜

吸い終わった煙草を携帯用灰皿に入れながら、高橋さんが急にこちらを向いて聞き返してきた。
「私は、えーっと……」
わからない。何本飲んだんだろう? 最初の頃は覚えていたが、途中からよく覚えていない。
「4本。あっ、違う。5本ぐらいだったと思いまあす」
「もっと飲んでるはずだ」
嘘。
「えっ? そ、そうですか?」
「自分が飲んだ本数も、覚えていないぐらい飲んでどうするんだ」
高橋さん……。
「飲むなとは言わない。だが、自分の適量も知らずに飲むもんじゃない」
何で?
何で、高橋さんにそこまで……。
「でも私、誰にも迷惑掛けてないですよお。誰にも絡んでないですし、暴れてもいませーん」
よく大学の飲み会で、酔って大声出して暴れたり、誰かに絡んだりしている男子を見かけたが、そこまで私はなっていない。
「そういう問題じゃない」
「じゃあ、どういう問題なんですかあ?」
「……」
酔っているから、酔った勢いで聞き返せているのかもしれない。普段だったら、きっとこんな風に高橋さんに聞き返したり出来ないと思う。それだけ酔っているということなのだろうか。それとも、これも酔っぱらって絡んでいるうちに入るのだろうか。
酔っている自分を、冷静に分析しているもう一人の自分が居る。だけど、どちらにも言えることは、何となくイライラしているということ。
何で高橋さんは、また黙ってしまったんだろう?
横に座っている高橋さんを見ていると、大きく深呼吸しているのが見て取れた。そして、おもむろに高橋さんが立ち上がると私の目の前に立ち、鋭い漆黒の瞳で私を見下ろした。
な、何?
目を逸らせない。この威圧感というか、眼光の鋭さの中に冷徹さを感じる瞳。いつものような、温かみのある優しい視線は微塵にも感じられない。
「お前は、それすらもわからないのか?」
「な、何がですかあ?」
思考能力は、まだ働いていると自負している。けれど、高橋さんが言わんとしていることが、まったく理解出来ないし、次の言葉や行動が予想つかない。
気持ちを落ち着けようとして、残っていたミネラルウオーターを一気に飲み干し、空になったペットボトルを両手でギュッと力を入れて持つと、一瞬少し凹む音が辺りに響いた。
「もし……」
エッ……。