新そよ風に乗って ② 〜時の扉〜

出たはいいが、何処に行こう……。部屋に戻るしかないかな。
一旦、自分の部屋に戻ろうと歩き掛けたが、やっぱり何となく部屋には戻りたくなかった。それに、神田さんが捜しに来たら困る。そう思ったら、そのまままた宴会場を覗いてみようとエレベーターに乗っていた。
そう言えば、いきなり乾杯の渦に巻き込まれて、高橋さんにまだ謝っていない。早く謝りたいけれど、だけど……。
宴会場にちょうど入ろうとしていた、何人かの人達と一緒に目立たないように入り、壁際からさっきまで自分が座っていた辺りを見ると、私が座っていた場所にはまだ土屋さんが座っていて、その周りには黒沢さんやその取り巻きがズラッとテーブルに座って飲んでいる。
高橋さんは……。
私の左隣に座っていたはずの、高橋さんの姿が見えない。
あれ? 何処かに移動したのかな?
もうお開きになっているため、部屋に戻っている人も居るから、経理以外の人が経理の区画だったあちらこちらのテーブルに座っている姿も見えるが、高橋さんの姿は何処にも見当たらない。
そう言えば、中原さんも……。
二人とも、何処に行ってしまったんだろう?
「そこで、何やってるんだ?」
エッ……。
た、高橋さん。
「何やってるんだ?」
「何って、その……。あっ、な、中原さん。中原さんを捜してたんです」
「中原?」
「は、はい」
咄嗟に口を突いて出た言葉が中原さんの名前で、中原さんの名前を口にした私に高橋さんも、聞き返すような感じで僅かに顔を近づけ、私の顔を覗き込むようにしてまじまじと見られてしまった。
「中原だったらー……」
そう言って、高橋さんは辺りを見渡し、中原さんを捜してくれている。
違うんです。
高橋さん。本当は違うの……。
「ああ、あそこに居るぞ」
エッ……。
高橋さんが指を指した先を見ると、テーブルの一角で中原さんが男子社員三人ぐらいと飲んでいた。
「あっ、はい。ありがとうございます」
高橋さんに教えてもらったのはいいが、中原さんに用事があるわけでもなく、その場にとどまるしかなくて恐る恐る顔を上げると、高橋さんと思わず目が合ってしまった。
「何?」
「あ、あのですね……。高橋さんは、今、どちらに行かれていたのですか?」
「俺?」