「高橋さん。一緒に飲みましょうよ」
高橋さんは、あちらこちらからお誘いが掛かっている。
やっぱり高橋さんは、人気あるんだな。何か、変な気持ち……。
「矢島さん」
エッ……。
「矢島さんは、これからどうするの? こっち、こっち」
声の主を捜していると、テーブルの左側から聞こえてきたのがわかり、みると中原さんがしきりに手を上下に振っていた。
「あっ、はい。同期と……」
「同期と集まるの? 何処で?」
途中で中原さんが、聞き返してきた。
周りの声が大きくて、よく聞き取れなかったのかもしれない。
「はい。何処か、まだ場所はわからないのですが」
「陽子。まだ此処にいたのね」
神田さん。
「捜しちゃったわよ。まさかとは思ったけど、この台風の目の中に居るとは。大した度胸だわ」
「そ、そんなことないわよ。だって、いきなり周りから……」
「わかった。話は後で聞く。取り敢えず、この猛烈な勢いのハイブリッジ・ヘクトパスカルを脱出するわよ」
ハイブリッジ・ヘクトパスカルって。
「あっ、ちょ、ちょっと待って」
神田さんに腕を引っ張られて慌ててバッグを持って立ち上がり、そのまま引っ張られるようにして席を離れると、後ろで『狡い』とか『ちょっと』とか、不平を口にしている声が聞こえ、気になって振り返ると土屋さんが、私が座っていた椅子に座って高橋さんの腕を両手で掴んでいた。
嘘……。
「ほら、陽子。気になるのはわかるけど、行くよ。ハイブリッジには、会社で毎日会えるんだからいいでしょ?」
「そ、そんなんじゃないから」
「いいから、いいから」
「嫌だ。本当に、そんなんじゃないから。ただ……」
「ただ、何?」
それまで小走りしながら私を引っ張っていた神田さんが急に立ち止まったので、何事かと思い、私も立ち止まった。
「あ、ああ。あのね……土屋さんっていう、何年目の人かよく知らないんだけれど、その人が凄くクネクネしてて……」
「クネクネ?」
何を言っているんだろう。土屋さんのことなんて、どうでもいいことなのに。
「それで、先輩の折原さんがスネーク女って呼んでたから、ぴったりだなと思って」
「ふーん。それだけ?」
「う、うん。そ、それだけ」
「陽子。もう少し、演技勉強した方がいい。バレバレだから、話逸らそうとしてるのがね」
うっ……。
神田さんに、バレてしまっていた。
「なーんてね。行くわよ。みんなで集まる場所を提供してくれた男子の部屋でやるから」
「そ、そうなんだ」
エレベーターに乗りながら、神田さんがそう教えてくれたその部屋は、偶然にも経理の部屋と同じ25階だった。
「あった。部屋番号2525。此処だ」
神田さんがノックすると、知らない女子がドアを開けてくれた。
「まゆみ。お疲れ。誰? この子」
そうか。出ていないから、私のことを知らない人が……。
「誰? 今度は、誰が来た?」
エッ……。
その時、部屋の中からそんな声が聞こえ、女子の後ろから人影が見えた。
聞き覚えのある声。
「ハッ? 何で、矢島が此処に来るんだよ」
「近藤さん……」
高橋さんは、あちらこちらからお誘いが掛かっている。
やっぱり高橋さんは、人気あるんだな。何か、変な気持ち……。
「矢島さん」
エッ……。
「矢島さんは、これからどうするの? こっち、こっち」
声の主を捜していると、テーブルの左側から聞こえてきたのがわかり、みると中原さんがしきりに手を上下に振っていた。
「あっ、はい。同期と……」
「同期と集まるの? 何処で?」
途中で中原さんが、聞き返してきた。
周りの声が大きくて、よく聞き取れなかったのかもしれない。
「はい。何処か、まだ場所はわからないのですが」
「陽子。まだ此処にいたのね」
神田さん。
「捜しちゃったわよ。まさかとは思ったけど、この台風の目の中に居るとは。大した度胸だわ」
「そ、そんなことないわよ。だって、いきなり周りから……」
「わかった。話は後で聞く。取り敢えず、この猛烈な勢いのハイブリッジ・ヘクトパスカルを脱出するわよ」
ハイブリッジ・ヘクトパスカルって。
「あっ、ちょ、ちょっと待って」
神田さんに腕を引っ張られて慌ててバッグを持って立ち上がり、そのまま引っ張られるようにして席を離れると、後ろで『狡い』とか『ちょっと』とか、不平を口にしている声が聞こえ、気になって振り返ると土屋さんが、私が座っていた椅子に座って高橋さんの腕を両手で掴んでいた。
嘘……。
「ほら、陽子。気になるのはわかるけど、行くよ。ハイブリッジには、会社で毎日会えるんだからいいでしょ?」
「そ、そんなんじゃないから」
「いいから、いいから」
「嫌だ。本当に、そんなんじゃないから。ただ……」
「ただ、何?」
それまで小走りしながら私を引っ張っていた神田さんが急に立ち止まったので、何事かと思い、私も立ち止まった。
「あ、ああ。あのね……土屋さんっていう、何年目の人かよく知らないんだけれど、その人が凄くクネクネしてて……」
「クネクネ?」
何を言っているんだろう。土屋さんのことなんて、どうでもいいことなのに。
「それで、先輩の折原さんがスネーク女って呼んでたから、ぴったりだなと思って」
「ふーん。それだけ?」
「う、うん。そ、それだけ」
「陽子。もう少し、演技勉強した方がいい。バレバレだから、話逸らそうとしてるのがね」
うっ……。
神田さんに、バレてしまっていた。
「なーんてね。行くわよ。みんなで集まる場所を提供してくれた男子の部屋でやるから」
「そ、そうなんだ」
エレベーターに乗りながら、神田さんがそう教えてくれたその部屋は、偶然にも経理の部屋と同じ25階だった。
「あった。部屋番号2525。此処だ」
神田さんがノックすると、知らない女子がドアを開けてくれた。
「まゆみ。お疲れ。誰? この子」
そうか。出ていないから、私のことを知らない人が……。
「誰? 今度は、誰が来た?」
エッ……。
その時、部屋の中からそんな声が聞こえ、女子の後ろから人影が見えた。
聞き覚えのある声。
「ハッ? 何で、矢島が此処に来るんだよ」
「近藤さん……」

