新そよ風に乗って ② 〜時の扉〜

「俺は、俗に言う、言ったもの勝ち。やったもの勝ちというのは好きじゃない。そんな一方的な方程式を、成り立たせたいとも思わない。だが、そういうことをしても、結局は敵を作るだけで、自分にプラスになることは何もない」
高橋さんの言葉に、迷いのない強い意志を感じた。
「何事も、志はあっても、心が折れてしまったら終わりだ」
「高橋さん」
「不器用だって、いいじゃないか。完璧な人間なんて存在しない。俺も中原も、何度も失敗することだってある。理不尽なこともあるだろう。壁にぶつかって何度も何度も失敗して、失敗を教訓にして、次に活かせばいい。生きている限り、生涯、次、つまり明日は必ず来る。矢島陽子という人間は、お前以外存在しないんだ。お前がいくら失敗しても、俺も中原も何回でも手を差し伸べる。突き放したりはしない。だから、もっと前を見ろ」
高橋さん……。
「返事は?」
「は、はい……ありがとうございます」
でも、高橋さんの器は大き過ぎて、それに甘えないようにしないと……。
あっ。
その時、ポンポンを振りながらこちらを向いて微笑んでいる神田さんの姿が目に入った。
まさか……私に振ってる? まさか……よね?
でも、神田さんは明らかに私に向かってポンポンを振っているように見える。
それにしても、神田さんのポンポンの振り方は、周りの人とは全然違うというか、数段上手い気がする。何でだろう? 背が高いからそう見えるのかな?
「お前の存在を忘れずに、気に掛けてくれている人も居る。その気持ちに応えるように、ちゃんと観ていないとな」
「はい」
神田さん。優しいな。
「オマケの鼻は、そのうち摘むから」
ハッ!
「高橋さん」
「はい」
思わず振り返ると、返事をした高橋さんが、はにかんだように口元を緩ませて涼しげに笑っていた。
だ、駄目だ。この笑顔にいつも何かやられてしまい、それ以上、何も言えなくなってしまう。
「何だ?」
「い、いえ……何でもありません」