新そよ風に乗って ② 〜時の扉〜

「はあ……」
難しすぎて、よくわからない。
「俺が言いたいのは、どちらか一方のみが成り立つという答えは数学上、つまり数字や空論の世界ではそうかもしれないが、人の感情がそこにある限り、答えは一つではないということだ。参加することが、正しい答えだと誰が決めた? 不参加が悪いことだと誰が決めたんだ? その線引きを誰がした?」
高橋さん……。
「もし、お前が参加しなかったことで、とやかく言われたのなら……。それを悪いと決めつけられたのなら、その時は、俺が上司として話をする。それが上司として先に社会に出た者としての務めだ」
「高橋さん」
「人は数字じゃない。感情を持った生き物だ。答えは決して一つじゃない。たとえ正しい答えがあったとして、自分が万が一、その答えを見出せなかったとしても、その正しい答えに出来る限り寄り添えるような人になれればいい」
「はい……。ありがとうございます」
ステージを観たまま涙が溢れていたが、空気の流れからか、不意に高橋さんの香りが間近でした。
「それ以上泣くと、おまけの鼻摘むぞ」
エッ……。
「意表を突いた言動に、相手は驚いたり戸惑う。さっき俺が言ったことは、表裏一体だからな」
表裏一体?
「世の中、千差万別。本当に色々な人がいる。中には、相手が何も考えていない言動をしてくることも多々ある。何も考えていない。つまり相手に対して配慮を持っていないということだろう?」
「はい」
高橋さんの言葉を聞きながら、特別な意味はないが視線は近藤さんを目で追っていた。
「人は無意識にそういう行動、言動に出ていることもある。捉え方も様々だ。知らぬ間に相手を傷つけていることもある。そんなつもりじゃなかったということが多いのは、そういうことだ。それだけ自分も相手に対して、同じことをしているかもしれない」
知らぬ間に相手を傷つけていることもある……。確かに、そうかもしれない。そういうつもりじゃなかったのに、相手を傷つけてしまったとよく耳にする。
「だからこそ、見えない部分の配慮は相手にも、そして自分にも必要なことなんだ」
見えない部分の配慮は、相手にも自分にも必要なことなんだ。
でも、そういうことばかり考えていたら、何も話せなくなってしまいそう。
「失敗は、恐れるな」
エッ……。
何か、私の声が聞こえてしまったみたい。