たった一人、君に恋して



 父が亡くなってからは、母の働きぶりは以前にも増した。


 その頃は従業員も今より多くいたし、バイトもそれなりに人数がいたのでそこまで苦労はしていなかったが、一人で二人の子どもを育てなければいけないという責任感から母も焦りがあったのだろう。

 中学生になってからは、俺も母の手伝いをするようになり、姉ちゃんも学校から帰るとすぐに店の手伝いをしていた。


 中学生の頃は料理を運ぶことと洗い物しかできなかったが、今は事務作業や経営にも関わっている。

 店で提供しているふりかけやご飯のお供、おかずも冷凍配達をしているため、店の営業以外にも様々な仕事があるのだ。

 
 周りの友達は高校を卒業してから専門学校に行ったり、大学に進学したりと働いている友達は少ない。

 たまに、周りのみんながうらやましくなる。

 俺も、本当なら大学に行って勉強がしたかった。


 どこかでバイトをして、休日は朝まで遊んで・・・。

 そんな生活を夢に見ていた。