たった一人、君に恋して



蒼生side


「蒼生ー! カラオケ行こうぜ」


「おー! 仕事終わり連絡する」

 高校を卒業して以来、俺は実家の仕事を継いでいた。

 本当は自分のしたいことがあったが、高1の時、父が亡くなった。

 それ以来、母が女手一つで俺と4歳年上の姉ちゃんを育ててくれたが進学はかなわなかった。


 堂本食堂。

 これは俺の父と母が始めた定食屋だった。


 朝7時から夜の10時まで営業をしており、駅近ということもあり比較的どの時間帯もひっきりなしにお客さんが来る。

 価格設定が破格ということにも人気の理由はある。


 今は母と姉弟、それから何人かのバイトで営業をしている。


 物心をついた時から、両親は常に働いているイメージがあった。

 実家の隣が店なので、基本家には俺と姉ちゃんしかいなかった。