儚い桜に花びらを

さくらは体育祭の途中で倒れ込みそのまま意識を失った。
かかりつけの病院に搬送され、俺は救急車に一緒に同行した。
治療室に運び込まれたさくらを見送り俺は誰もいない待合室に案内されただただ無事を祈ることしか出来なかった。
救急車を追いかけ走ってきてくれた向井と咲が到着すると何があったんだ。と尋ねられ俺は分からない。まだ治療中だから。と答えた。
2人に病気のことを伝えた方がもし今後何かあった時でも助けになってくれるだろうし、俺がそばにいられない時でも咲や向井がいればなんとかなることも多いだろう。たださくらはきっとそれを嫌がる。
2人に迷惑がかかるとか、人の目を気にしてもっと生きる希望を見失うだろうと思った。
目を覚まして少し落ち着いた時2人にどう説明するのかさくらの意志を聞いてからじゃないと判断できないとおもった。

三十分以上たった頃、担架に乗せられたさくらが酸素マスクをつけられた状態で病室へと運ばれた。
治療室から主治医らしき男性が出てきて、御家族の方はいらっしゃいますか。と言われた為、無意識にはい。と返事をした。
6畳くらいの薄暗い部屋へと連れていかれ、何か言いづらそうに口を開いた。
単刀直入に言います。 病気はかなりのスピードで進行しています。できることが出来なくなっていることも増えているはずです。できるだけ心にも身体にも負担がない生活を心がけて頂きたいです。
頭が真っ白になり、何を言っているのか分からなかった。
改めて詳しく説明してくれた話をまとめると
1人で生活することはもちろん、外に出ることも事故に遭う可能性あるため危険。
合併症の心配もあり、ここからは食べることや歩行等当たり前にできていたことが出来なくなる為、介護が必要になるということだった。
このまましばらく入院して頂きます。病院で経過観察をさせて頂きたいんです。
しばらくっていつまでですか。
主治医の話を遮るように目を伏せたまま口にした。
答えにくそうにいつまでとは断言できません。

つまりこのままここで死を迎えてしまうことだってあり得ると言うこと。
どうしていいか分からずさくらの病室へ向かい、ベットに横たわるさくらの手を握ると意識は朦朧としているもののゆっくりと目を開けた。
わかる?ここ病院。結城だけど、、
忘れられていることも覚悟して自分の名前を言うとさくらが結城、と小さくか弱い声で名前を呼んだ。
涙を見せないように唇を強くかみ締めてうん。と頷くとニコッと笑顔を見せた。