儚い桜に花びらを

さくらが死んでからこの世界は静かになった。
君が死んでから1度目の春。一緒に見ると約束したさくらも今は一人で見あげてる。
『 さくら、見えてるか。一緒に見るって約束したろ。』
さくらが居なくなったこの日常に慣れることはきっとない。というか、慣れたくない。さくらが居たということ、秒で過ぎ去ってしまった2人ですごした冬も。さくらが病気と闘った証も全て、忘れたくないから。
生きる意味も命の大切さもさくらから教えてもらった。
人は生まれた時点で人生のカウントダウンが始まっている。どれだけの時間が与えられ、どれだけの時間が残されているのかそれは誰にも分からない。
でも、それでいいんだと思う。
分からないからこそ、1日1日を大切に生きて欲しい。
悔いが残らない生き方をして欲しい。
1年365日、1日24時間。その1秒1秒を噛み締めて生きていきたい。
いつか、さくらと再会できる日まで。
そんなことを考えてるとまるで隣にいるよと伝えるように桜の花びらが舞い落ちる。
これから何度君がいない春を過ごすだろう。
でもこれだけは言える、何度春が来ても君と桜を見よう。そばにいないとしても心に居るって信じてるから。
『ありがとな、さくら。』
大きな桜の木に背を向けて君がいない世界を受け入れるように1歩、1歩足を踏み出す。