彼処で、別れたはずだった、のに。

「零下ー」

その呼ぶ声につられ、私は一回に降りる。

「何ー?お母さん。」
「いやね?手紙が何通か送られて来たのよー」
「え。キッ」
「え?」
「いや?なんでもない。誰宛て?」
「零下。」
「え?」
「零下宛てなの、全部。しかも、令嬢からなのよねー…。」
「…は?」
「昔から顔が良いからー。前に婚約予定だった人は直接来たしねー…。」

私は少々怪し気に思い、目に留まった一通の手紙だけを開封する。
そこには私、お父さん、お母さんの名の順に綴ってあった。

拝啓 
 俳花 零下様 燈火様 尊志様
  
 この度、このようなお手紙を出させて頂いたのは、俳花零下様に此方のミリシア国の王子と婚約をして頂けないかという内容をお伝えしたかったからであります。とても恐縮ですが、婚約をして頂けるとなったら城中、そして保証金やその他諸々俳花様に差し上げる心算でおり___。

「お母さん、私此処行く」
「え!?」
救って()貰えるからさ!」
「そうなの…?でも名前書いてないし、怪しくないかしら…」
「でもこの国の王子だよ?前みたいに隣国じゃないから、安心出来そうだよ。」
「そう…?対面日は…、あし」
「行ける。」

この度二回目にして俳花零下、王子の婚約者となります!