中学生になって間もない頃、愛想笑いに疲れを感じた少女は、部活を抜け出し、放課後の誰もいない教室へ向かった。

あまり部活が充実していない学校なのもあり、スポーツも美術もパソコンも苦手な少女は、必然的に吹奏楽部に入らざるを得なかったのだが、これがまた、気を遣うことばかりで疲れるのだ。

自分の席に座り、机に突っ伏していた時、

「あのさぁ…あんまり無理すんなよ？」

そんな声に顔を上げると、同じ小学校出身で、昔から人気のあった少年が居た。

「無理って？」

いくら小学生の頃からの知り合いとはいえ、特に親しくもない二人。

それなのに、どうして少年に胸の内を見抜かれてしまったのか、ヒヤリとしながらも聞き返す少女。

「そんなに心配しなくても、いじめならもう起きないから」