花野井咲(はなのいさき)ver.

私の日課は毎日学校に行くこと。
そしてお勉強をすること。
その後は塾に行き、またお勉強をすること。
そんな日々を繰り返している。
母親に敷かれたレールを走っている。
……とてもつまらない人生。
「咲、学校行く時間よ」
「はい、お母様」
でも裕福な暮らしをさせてもらっているのだから文句は言えない。
言ったらなにをされるのかなんてわからないもの。
だから大人しく言うことを聞く。
従順で聞き分けのいい子を演じるの。
そのゲームはなんだか少し楽しいわ。
そんな私がある日、目にしたのは…ある男だった。
「…ここはどこかしら？」
考え事をしていたらいつの間にか知りもしないとこに来てしまっていた。
「困ったわね…」
駅がどっちの方かもわからない。
こんな時に限ってスマホを今日は家に忘れてきてしまった。
私はずっとその場に立ち尽くしていると……。
「大丈夫か？」
声が低いがそれでも優しさが伝わってくる…そんな声が私の背後から聞こえた。