椎名蜜(しいなみつ)ver.

私は私が嫌いだ。
女の子の私は嫌い。
「蜜ちゃん足細くてスカートすごい似合うね!」
スカートは嫌い。
スカートが似合うなんて褒められてもちっとも嬉しくなんかない。
「ねぇ蜜ちゃん!」
ちゃん付けで私を…俺を呼ぶな!
女の子と嫌でも言われてるみたいでそれが俺を縛り付ける。
気持ち悪い…。
化粧をするのも。髪を伸ばすのも。
可愛いものを見る度に憎悪。
もうこんな人生…嫌だ。
「蜜…大丈夫か?」
「……」
父さんはいいよね。
男に生まれてきて。
どうせ生まれるなら俺は女の子ではなく男の子に生まれたかった…っ。
どうして胸が大きくなるの?
月に一度、お腹も痛くなり体調も崩す。
もう女の子なんて…嫌だよ。
「また男の子っぽい服着てるの?」
そう顔をしかめる母さん。
その顔と態度で嫌でもわかってしまう。
母さんはきっと……嫌なのだろう。
自分の娘がトランスジェンダーと認めるのが……。