もし奏斗が俺の方を向いてくれたならどれだけ嬉しいことか…。
もういっそ、言ってしまおうか。
「奏斗」
「ん、どうしたの?」
ニコニコと笑いながら後ろを振り返る奏斗。
「お前が好きだよ」
「え…、それって…」
やっぱり受け入れられないよな。
「友達としてな」
「あ、友達ね!うん!俺も奈緒くんのこと好きだよ!」
まだ本当の気持ちは言わない。
だって言ってしまったら──。
「ねぇ奈緒くん!今日の放課後新しくできたカフェ行こうよ!」
「いいけど何があるの?」
「なんかね、美味しいホットケーキがあるんだって!」
「本当に奏斗は甘いの好きだな」
俺と奏斗は笑って昇降口へと向かう。

──言ってしまったらもう友達には戻れないから。だから言わない。君の幸せを願うよ。