作者ナビゲート解説


麻衣とケイコ…。その引火点と発火点が決せられるのは2度目の対面時にでした。ただ、その時点での彼女らの間に存在し得た”火源”は、二人が共通して”義理の姉”と慕う高原亜咲の尊厳を巡っての想いからでした。しかし…。


この日から約2か月後…、麻衣とケイコは火の玉川原で壮絶なタイマンの果たし合いを繰り広げる訳ですが、そこでの二人の眼中から、己の炎の燃焼させる”媒体”は端によせられていたのです。乱暴に極言すれば、亜咲や南玉連合の存在は、命のやり取りにまで達していた”決闘”の場では、彼女らにとってはもはやその熱き血を点火させたきっかけに過ぎなかったと…。


本稿アップのエピソードでは、まさに猛る女達のその夏に向けたそれぞれの発熱模様が、絵に描いたような化学変化を伴ったとも言えるムーブメントの激しき序章を折りなすことになります。


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そしてそのステージこそ、”赤い狂犬”合田荒子の南玉連合4代目総長就任セレモニーが開催された夜でした。奇しくもその日、東京埼玉都県境に赤塗りの種を撒いた”怪物”紅丸有紀が、アメリカ西海岸に移住するため、ロスに発った日でもありました。


『ヒートフルーツ全編版』本編では、その辺りの事象重複を絡んだ背景を盛り込んで、複数の時間軸で麻衣とケイコのその後を示唆・予兆させるエピソード描写としました。


対して、今回の検証版はあくまで本郷麻衣のフルロードからの視点としているので、作者の思い入れに対する削げ落ち感は否めませんが、”その夜”の本郷麻衣こそ、紅丸有紀が去った後の猛る女が進むべき道筋を痛烈に突きつけたということは、後のストーリー展開を鑑みるに否定のしようはないかと思える次第と捉えています。


かくして麻衣は極めて暴力的なアプローチを以って、紅丸有紀を”失った”その後の都県境に宿命つけられた再編闘争の舞台をプレゼンテーションすることとなるのです…。