作者ナビゲート解説①


本郷麻衣が初めて味わった自己挫折…、その局面の対峙相手は相川夏美でああったのは事実としても、実質、麻衣に敗北感を突きつけたのは紅丸有紀でした。


それは自分こそが、相馬の持ちえるそのイカレたケモノ精神の通破者だという自負をふっ飛ばされたに相当した、完封なき”違いの差”を突きつけられた、麻衣にとっては壮絶な壁感の許容でした。


言うまでもなく、麻衣は会ったこともない”伝説の怪物”紅丸有紀には、高原亜咲とは違った意味での憧憬、リスペクトの念を抱いていました。それ故に、彼女にもたらした自己挫折の念は一層深いものがあったのです。


しかし、麻衣は”それ”を慮る、他ならぬ相馬豹一の深意を汲み取れたことで、その目の前に降り注いだ状況を逆転視することを現出でき、遂に究極の脱皮を果たす訳でして…。


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”その後”の麻衣は、まさしく自然体に任せることでイカレ成就の旅路を激走できる自動操縦機を会得したに等しい、神がかりてきな”何か”を手中とするに至ります。


彼女はまさに、既定空路をまるで約束されたルートをなぞるように踏破を重ねてゆくのですが、その助走過程が、レッドドッグスの”てこ入れ”であったと言っていいでしょう。それほぼイコールの形で、高滝馬美リンチ追放と北田久美、そして外様の津波祥子を副官ポストに起用する”今後”を計る人事”となります。


その挙行の場が、暴風雨に晒された伊豆でのドッグス決起集会の夜となります。ここで、麻衣とその第一次同行者の群は形成され、レッドドッグス結成時に麻衣自身、その右腕と目した高滝馬美はもはやそこには姿がありませんでした。


麻衣は結果的に馬美を想定していたポジションには、津波祥子にゆだねる訳ですが、後に南玉連合総長に就く祥子はこの夜、嵐の中タイマンで対決した馬美をその片腕に抜擢することになるのです。…今、作者はこう思う次第です。このことは、その時点で既に他界していた、他ならぬ麻衣がむしろ望んだカタチだったのではないかと…。


そして、その伊豆集会の直後、麻衣は運命の宿縁たる好敵手となる横田競子と、その後を決定つける対決宣言を交わすのです。かくて、その二人による引火点はその導火線に発火をもたらし、麻衣の常軌を逸したクレージー極まる歩みは、いわばその後の都県境の猛る女達をその磁気で惹き付け、彼女らをモア―ベターのポジショニングに誘導していくのです。