玉砕覚悟でいこう
友達じゃいられなくなるかもしれないけど


体育館のカギを職員室へ返却して下駄箱に行くとまだ彼はいなかった
少し待っていると着替え終わった同級生たちとやってくる彼


「寒いのに待たせてごめん」


しおらしい成迫にクスッと笑って
「別に大丈夫」と返す


可愛げのない返事だったかもしれない
だけど本当に寒さは大丈夫で、むしろちょっと熱いかも


2月だから気温は冷たいけど、私はそれどころじゃない
これからのことで頭がいっぱいになっている


みんなと別れて私たち2人は駅方面へ
みんな徒歩か自転車圏内で、電車組はなんと私たちだけ


他の部活は電車の線は違うけど、電車通学が多かったりするらしい
聞いたことないから本当の情報なのか知らないけど


なるべくいつもと変わらない風を装って話しながら歩く
今日で最後になるかもしれないからしっかりこの景色を焼き付けて、道路を踏みしめて


タイミングよくホームに滑り込んできた電車に乗る
こんな時に満員電車で前後左右から押されて押し競まんじゅう状態


変形しないようにチョコを守る
ついでに自分も他人に押しつぶされないように


キキ━━ッ!「きゃっ」
駅についた電車の揺れに耐えきれなくて倒れる私


後ろの人も倒れてきて、つぶされるかも
こんな満員で避けれないし、助けたくても手を伸ばせない


あ、もうダメだ
ぎゅっと目をつむる


「詩乃!」


少し離れていた成迫の声が聞こえて、チョコは死守しなきゃと構える
なのに...衝撃はなくて