ガラ─────────


空いた扉にみんな目がいく
そこにいたのは


｢おい、碧～！戸叶のチョコだけもらいに来るのかよ｣
｢部活サボんじゃねーよ碧｣
｢碧先輩遅いっすよ｣


一直線に歩いてきて｢ん。｣と手を出してくる
いやいや、部員たちを無視するのはやめようよ


｢成迫の分もあるから安心しなよ。｣


そう言って、｢はい。｣と渡す
｢サンキュ。また後でな｣


たった２言、されど２言
これだけで私の気分は急上昇


部員たちと一緒に更衣室へ行く成迫の背中を見送る
ひとり誰もいなくなった体育館でガッツポーズしたのはナイショ


でもここからが本番
荷物にならないタイミングで渡すのが大事だよね


私たちが分かれるのは電車を降りて10分くらい歩いた桜公園
春になると大きな桜の木が満開になってきれいだから勝手に呼んでいる


正式な名前が書いてあったはずの場所は、風化でボロボロになっているから読めない
公園内の遊具も錆びついているせいか子供たちが遊んでいる姿を見たことがない


唯一ベンチだけ使用できて、自動販売機もあるから一息つくのには最適のスポット
私も成迫と何回かベンチに座って長話をしたこともある


自然にベンチで話すように促して、そこで渡そう
イメージトレーニングは完璧


積年の想いを伝えて、チョコも渡そう
本当だったら去年振られてるも同然なんだし