「入るの久しぶりだね」


もう暗いせいで誰もいない
淡く光っている自販機でそれぞれ飲み物を買いベンチに腰かける


「この公園の柚ミルクティーが一番おいしい」
ぼそっとつぶやいたのは本当においしく感じたから


多分隣に成迫がいて
彼と一緒に飲むからだと思う


「まぁ、確かにココの苺ココアは甘い」


2人して美味しいねって言いながら飲む
もう渡さなきゃ


この関係も私が渡せば終わっちゃう
今年こそ渡すって決めたのにためらってしまう


無言の私たちに2月の冷たい風が吹きつける
頑張れ私!意気込んで息を吸う


「「あのさ」」


かぶった声


「成迫先にいいよ」


先延ばしにしたくて彼に促す


「言うか迷ったんだけどさ、それ渡さなくてよかったのか?」
彼が指したのは私の左手にある紙袋


「渡したいやつがいんだろ?今からでも遅くねえぞ?」
誰宛て?家知ってるやつかもしんねぇし


あなた宛てのあなたのためだけに作ったあなた用のチョコです
って言いたいけど、自分がもらえるなんて思ってなさそうな彼にやっぱり脈なんてないと改めて実感する


「これは...」


言い淀んでいると、「詩乃」
彼に呼ばれて顔尾を上げる


「これ、俺が用意してたチョコ」
そっと私の膝の上においてくれる


「逆チョコってやつな。って詩乃?!」


私が突然泣きだしたからだろう
だって、まさか成迫からもらえるなんて思ってなくて