うっすら目を開くと私と倒れそうになっていたサラリーマンを成迫が支えてくれていた


「大丈夫でしたか」


ドアが開いて人々が降りていく
サラリーマンもここで降りるみたい


「ありがとう」と成迫にお辞儀をして改札をくぐっていった


「こっちこい」なんて腕を引っ張られてきたのは車両と車両の連結部分
まだ俺らの降りる駅先だからとあまり人がいないこの場所に


ドア付近に比べたら少ないってだけで人はいるから
必然的に成迫と距離が近くなる


あと6駅もこの状態
誰も私のことなんて見てないだろうけど、嬉しいような恥ずかしいような気持ちが入り混じる


私が下を向いたせいで無言になる私たち
電車の走行音がガタンゴトン聞こえる


今度はカーブに耐えきれなくてふらついてしまう
「詩乃、俺の服でも掴んでれば?」


いつもは耐えることができるのに
今日は内心の乱れのせいか揺れに耐えきれない


「うん、お言葉に甘えて・・・」
ちょこっと成迫の制服をつかむ


このドキドキが伝わってほしいけど、伝わってほしくない
今日はよくわからない感情に振り回される


「次はウメギシ~ウメギシ~降り口は左側」
私たちの降りる駅に着いちゃった...


人の流れに乗って私たちも降車して改札を通る
駐輪場に置いた自転車をお互いとってくる