空に一番近い彼

◇◇◇

このままでは彼が帰ってしまう。嫌だ。絶対に嫌だ。もっと一緒にいたい。わがままなのはわかっている。明日もびっしりスケジュールは入っているだろうし、危険と隣り合わせの仕事だから、しっかり睡眠も取らなければならないだろうし、でも……

私は右手で鎖骨辺りを強く掴んだ。
私たちだけの手話

彼がこちらを向く。どうしたんだろう、こっちに来てくれない。手話を忘れてしまったのかな。私の独りよがりなのかな。段々不安になって手話をやめた。さようならと手を振る。

玄関のドアを開け、中へ入ろうとした時、後ろから激しく抱きしめられた。そのままソファーまで連れて行かれ、押し倒されると彼が私に覆い被さった。

彼が何か言っている。読み取れない。
必死に読み取ろうとするも、激しく唇を奪われた。青空の下で交わしたものよりももっと激しい。息ができない、どうしよう身体が火照る。彼の唇が次第に首筋へと下りてきた。私の指に彼の指が絡まる。初めての体験に一気に緊張が押し寄せ、身体が硬直してしまった。そんな私に気づいたのか、彼は我に返ったように私から離れた。

険しい顔で頭を抱えている。私は彼にこんなにも辛い思いをさせているのだろうか。

「ごめんなさい」

彼が驚いた表情を向ける。

『何故美咲が謝るんだ。謝るのは俺の方だ。感情を抑えきれなくなった。美咲の全てが欲しいと思った。抑えきれず押し倒した。ごめん』

「私、こんなの初めてだからどうしていいのかわからなくて、緊張して、身体が固まって」

彼は被りを振った。

『当たり前だ。男からあんな風に押し倒されたら硬直するに決まってる』

「駿さん、私のこと大切に思ってくれてありがとうございます。凄く嬉しい。私、貴方が優しく木に触れるのを見て、恋人に触れてるみたいだなって思ったんです。木が羨ましい。駿さん、お願いがあります。貴方のこの手で抱いてください。どうやったらいいのか不安で心配だけど、駿さんと一つになりたい」