君が生きた証を残すから


「宝田湊大さんですか?こちら、お届けものです」

 家に帰って来たのと同時に郵便物を受け取った。
 それは大きめの封筒だった。中に何か入っている。

 宛名は書かれていないけど、間違いなく僕宛ての荷物。
 部屋に戻り、封筒を開けると中から一冊のノートが出てきた。
 比較的新しめのノート。
 ページを捲ると、そこには見覚えのある文字が書かれていた。


 【二○XX年四月△日。

 始業式からしばらく経ってるけど、私は初めて学校に行った。呪いのおかげで、みんな私のことが見えていた。

 そこで会った隣の席の宝田湊大くん。彼と会うのは四度目。
 小さい頃と、公園にいた時と、二年の登校初日。あの日、自分の席を確認しにいったら彼もいて驚いた。
 湊大くんは気づいてないみたいだけど、どうしても気になって、彼の方を見てたら睨んでいるのかと勘違いされて焦った。
 でも本当のことを話すわけにもいかないから誤魔化したけど、これから大丈夫かな……会えたのが嬉しくて、また見ちゃうかも。でもいいか、私が死ねば忘れるから。
 忘れても、また仲良くなってくれると嬉しいな。】


 書かれてある日付を自分が書いていた日記と照らし合わせて見ると同じだった。
 これは間違いなく、本物の水月日和が書いたもの。
 この時、彼女は生きていたんだ。
 丁寧に書かれている文字は、大人っぽい字に憧れて練習したと言っていた。

 これ以降のページにもその日にあった出来事が書かれてあった。
 クラスマッチのこと、寄り道をしたこと、僕に秘密を話したこと、家に来たこと、一緒に出かけたこと……。
 それは、最後に会う直前まで続いていた。

 そこから先は空白、のはずだった。

「あれ、何か」

 最後のページから少し捲ったところにも文字が書かれていた。


 【湊大くんは優しいから、自分の選択を後悔するかもしれない。
 だけど空白の時間の中で生きていた私のことを覚えているのは君しかいないから、代わりに生きてほしかった。】


 空白の時間。これは彼女が亡くなってから僕と過ごしていた時間のこと。
 彼女は何を思って僕に生きてほしいという言葉を残していたのか。
 その答えは次のページに書かれていた。


 【本当は少し後悔してるんだ。生きてほしいと言ったこと。
 その言葉のせいで、湊大くんを苦しめているんじゃないかって。
 自分にとって生きる意味になった人を失うのは悲しいし、辛いし、苦しい。私もよく知ってるから。
 その苦しみを湊大くんに背負わせてしまった。
 それでも、その苦しみを乗り越えた先で、このメッセージを読んでいるのなら――

 一緒に生きるという願いを叶えられなかった代わりに、私が生きていた証を、君と一緒に残してほしい。
 このノートは、私が生きていた証だから。】







 手元に届いた一冊のノート。
 彼女からのメッセージの隣に、僕はこう書いた。


 君と約束したから、僕は生きるよ。

 そして――


 君が生きた証を残すから。