「お父さんはまたお花を置いて出ていったみたいだよ。この花、私、なんの花かわからなくて」
私はちっとも興味ない、といったように花瓶に生けた花を一瞥すると直ぐにお母さんに視線を戻した。そのお母さんの顔を見てどうしようもなく罪悪感でいっぱいになる。目は桜と合わせているのに途方もないくらい切ない顔をしている。
「お父さんはどうして、なにも言わずに帰っちゃうのかしらね。とても綺麗…ガーベラね。お母さん好きよ、このお花。お父さん元気?」
「うん。でも仕事が遅くて、なかなか私が起きている時間に帰ってこないよ」
「たまに電話するんだけど…そう、なかなか時間なくてね。ちゃんと話せてないのよ」
ちゃんと話せてない、のが病状のことなのかそれとも今後の話なのか桜にはわからなかった。が、お母さんとお父さんがしっかり話すことはできないだろうと推測している。
「そっか。今度ちゃんと時間作って会いに行ってって言ってみる」
「ごめんね。いつも」
「ううん、はやく元気になってね」
あの男は私の言うことなんか聞きやしないのだ。
そう思いつつもお母さんが縋る糸は私しかいない。
桜は叶わぬ夢だとわかった上でいつ千切れてもおかしくない細い糸を垂らした。
私はちっとも興味ない、といったように花瓶に生けた花を一瞥すると直ぐにお母さんに視線を戻した。そのお母さんの顔を見てどうしようもなく罪悪感でいっぱいになる。目は桜と合わせているのに途方もないくらい切ない顔をしている。
「お父さんはどうして、なにも言わずに帰っちゃうのかしらね。とても綺麗…ガーベラね。お母さん好きよ、このお花。お父さん元気?」
「うん。でも仕事が遅くて、なかなか私が起きている時間に帰ってこないよ」
「たまに電話するんだけど…そう、なかなか時間なくてね。ちゃんと話せてないのよ」
ちゃんと話せてない、のが病状のことなのかそれとも今後の話なのか桜にはわからなかった。が、お母さんとお父さんがしっかり話すことはできないだろうと推測している。
「そっか。今度ちゃんと時間作って会いに行ってって言ってみる」
「ごめんね。いつも」
「ううん、はやく元気になってね」
あの男は私の言うことなんか聞きやしないのだ。
そう思いつつもお母さんが縋る糸は私しかいない。
桜は叶わぬ夢だとわかった上でいつ千切れてもおかしくない細い糸を垂らした。

