指さした先には濃いオレンジ色をした大輪の花である。長細い花びらは重ならず、柱頭は柔らかな黄色でグラデーションが綺麗だ。大きな水色のバケツにたくさん入っている。
あぁ、と店主は頷いた。

「ガーベラだよ。かわいらしい花なんだよ。今日はこれにするかい？」

「はい、とてもかわいらしいので」

「どの子にする？」

そういって桜に選ばしてくれた。
少し悩んだが、先端が一番オレンジが濃い花を選んだ。

「これ、にします」

「はい。あと今日はちょっとおまけだ」

そういって、ガーベラを一輪を抜き取った後、かすみ草を一緒につけてくれた。小さな白い花がガーベラを引き立てる。

「ありがとう。お母さんも喜ぶよ」

そういうと、店主は眉毛を八の字にして悲しそうな顔を向けた。

「お母さんは元気にしているかい？」

「はい…元気になってきてると思います。多分」

「ならよかった。また元気な顔を店に来てくれっていっといてね」

桜は曖昧に笑った。