ぶっきらぼうなロマンチスト

「……俺だったら、自分の父親がクズだったら肩をもつような真似はしない。だけど優先させたのは自分じゃなくて、母親だった。あとから話を聞いてその詳細を知ってあの時、武士みたいな覚悟が決まった目をしてても不安でどうしようもなかったんだなって思えたんだ」

ハンドルを彼は少し強めに握った。彼はよく、私の代わりに怒ってくれる。
いつもうまく自分の感情を吐き出せない代わりに彼が感じ取って怒ってくれてるのだと思う。

「お父さんはね、お母さんが病気になる前にも浮気してて家庭を顧みない人だったから。私のこともどうでもよかったみたい。だんだん興味がなくなっていったのも知ってるの」

まるで思い出話をするように穏やかに話す。もうお父さんとは縁が切れている。
初めは普通の家族だった。だけれど、どこからか咬み合わせが悪いファスナーのように、家庭内が狂っていったんだと思う。そしてそれに逃げたのがお父さんだった。ふつうのお父さんだった。今ならもう夫婦関係に口を出したとしても無理なことくらい諦めれるが、当時はやっぱり二人に仲良くしてほしかった。後悔していたお母さんの姿を見れば、やはりお母さんにできるだけ優しくしたいと思うのも必然だった。