ぶっきらぼうなロマンチスト



「桜はこんなわけわかんない状態で連れ出されても文句言わないのは、幾分肝が据わってる証拠よな」

と運転しながら大地はぼそりといった。まだまだ目的地まで着きそうにない。どこに連れてってくれるか検索しようかと思ったが、エゴサ禁止令を出されている。だから車内で流れる音楽に身を任せ、変わりゆく景色をぼんやり眺めていた。

「そんな、肝が据わってるっていうほどでは」

「妙に落ち着いてるっていうか。高校生のときからそうだろう?物怖じもしねえし」

「それは褒めてるの?」

「褒めてる褒めてる」

彼は軽口をいって、煙草に火を付けた。窓を開けてふー--と煙を吐き出している。
そしてどこか懐かしむように感傷に浸ったような声で。

「ま、でも一番目の当たりにしたのはお前の母ちゃん初めて見たときだな」

「そう?」

とぼけたように聞き返した。あの時の彼の表情はいまでも脳に焼き付いている。