「……ッッ」
吹き出しそうになるのを堪えていると、気配を感じたらしいお友達の実唯が、勢いよくこちらを振り向いた。
「これ最近の趣味」
「ブフォ」
ごまかし方下手くそだろ。
「……穴があったら入りたい」
耳を真っ赤にして、人生に絶望したみたいな顔をしている実唯が面白すぎてしんどい。
あんまり落ち込むもんだから、手に持つレシピ本を取り上げた。
「どれ?」
「へ?」
「どれ作りたいの?」
「これ……とか玲音好きそうだけど難しそう……これは簡単そうだけどそのへんのスーパーで買えそうだから……」
「難しかったらわたしん家でやればいいんだし、簡単でも実唯が下手くそに作るから意味があるんだよ」
パラパラとページをめくるごとに付箋がはってあって、実唯らしいなと思う。
「……コト……ことぉぉおお」
「これいいね」
そのページにだけビックリマークがいっぱいついてあって、情報量も多い。
飴をプレゼントする意味……
【あなたが好きです】
指差して見せるとミユはバッとレシピ本を閉じて隠す。
「……何を今更」
「あなたは何も見ていない……今のはまぼろし目の疲労……はああ!」
「うさんくさい催眠」


