実唯のつっこみと、たのしそうな笑い声を背に家庭科室を後にする。
校舎の外に出ると、一気に体の熱が吹かれた。まるで空気に吸い取られてるみたいだ。
「うるる……」
大袈裟に体を震わせてからまた歩みを進める。それでもアイスは食べたい。
んお?
なにやら向かう自販機の前に人影が。
右手でムギュッとカイロを握りしめ、左手の親指があちこちにさまよっている。そんなシルエットが見える。
……なに買うか迷ってんだ。
それにしても、なんで選ぶ指が親指だったんだろう。
この感じなんか既視感あるな……青いパーカ……ひとり……ひだり、きき……
ーーピッ、ガコンッ
「ぅぉ」「ぉぅ……」
落ちたアイスを手に取る前に、ぶんっとこちらを振り向いた透と目が合う。
ひゅっと大きく息を吸い込んでしまい、のどが冷たい。
「……」
左右に向く濃い黒目が、また私を捉える。
「ども」
「うん……」
軽く微笑まれ、また風が吹き、雲が動きだした。
「……なに気分」
「はい?」
問われて驚く。まだ会話が続くとは思わなかったから。


