俺から瞳、逸らさないでね



果たして実唯は気づいているのか。これが二度とないであろう、バレンタインチョコくださいアピールだということに……。



「……あんじゃない」



実唯はポソっと小さな声でこたえた。

耳と顔を真っ赤にさせながら。


……言った……この子あるって言った



「……あんだ」

「……」「……」 



ふたりの間に鬼気まずい沈黙が流れる。


……わたしも巻き添えなんだけど


実唯は目閉じて教科書のページをめくりまくってるわ、玲音はノートで壁を作って視界ガードしてるわ……

お互いこんなに素直になったことがないから、恥ずかしさと照れでなにしたらいいか分かんなくなってしまったのだろう。



「赤点回避」

「……それな」



空気に耐えきれなくなった実唯がごまかし、話はまた振り出しへ。


ああ。もうちょっとだったのに。


振り出しに戻るかと思いきや……なんか違うっぽい。ふたりとも明らか挙動不審だけど、なんかいつもと空気が違う。嬉しそう。


ちょっと進展……かな



「無駄にあっちぃからアイスかってくらぁ」

「えっ詞(ことば)さんいま冬だぜ?!」



重たい腰をあげると、みゆが勢いよくしがみついてきた。



「お腹壊して風邪引くかもしれない可能性がある件についてちょっと一旦話し合ってみない!?暑いってコトちゃん熱が%$✡#❆……!!」



でた。過度な心配性。



「ことぉぉぉ」

「みゆぅぅぅ……冷た甘いの摂取したい気分なの」

「コトあたしもついてく」

「ぜってぇくんな」

「え、こわ、なんなんこの子」


「コトちゃん俺もーー!なんでもいぃーー!」


「あいよぉーー!」

「八百屋か」