俺から瞳、逸らさないでね



「ひゃはははっおまっ、あれ言えよっ……きのう、」

「はっ、ばかっ、言わないって約束、」



……?


周りにいる男子たちが透と肩を組んでケラケラ笑う。

透は焦った様子で、男子たちの口をふさいだ。


……昨日、透が帰ったあと、涙が出るほど笑い転げていた人達だ


いったいどうしたんだろうと思っていると、乱闘から抜け出した一人が満面の笑顔でわたしを手招く。

不思議に思いながら、そっと歩み寄って耳を貸した。



「コトちゃんにチョコもらえたことが嬉しすぎて熱だして倒れて早退したんだよ、あいつ」



……なにそれ。



「ふっ……くっくくっ」

「あっ!!おまえ、コトちゃんになんか言った?!」

「言ってない、言ってない、なーんも。」

「ウソつけ!……っっ」



なんだ。

この人ふつうに人間っぽい。

変わってるけど、わたしと同じ、考えてる。

心のなかで本当はあたふたしてたり、なのになんもないふりしてみたり。

恥ずかしかったり、照れたり、思い通りにいかなかったり。



「あははっ」



分からないものから目を逸らすのは簡単で、でも退屈だ。



「……ことちゃん、……今日帰りにアイス食べない?」

「……チャラい」

「う」

「……にらめっこ勝てたらいいよ」



さあ、かかってこい。



「へえー……望むところじゃん」

「ことちゃん」



意味のないことなんて、なにもない。



「俺から瞳逸らさないでね」