「……実唯。」

「いいの……。あっちがそんな態度なら……私だって」



なにを言っているんだろう。せっかく一生懸命作ったのに。あんなに目を輝かせながら、顔ににクリームつけながら。

嬉しそうに、楽しそうに笑って、喜んでくれるかなって、言ってたじゃん。



「ふああ……、ミユコトちゃんおはよオふぁ〜」



昨日の実唯を頭に思い浮かべると、ボンッとなにかが沸騰して爆発して、抑えらんなくなって、

あくびをしながら呑気に登校してきた透に真正面から向き合った。



「おお……?」



間抜けな顔でわたしを見る透へ、大切に持ってきた紙袋を乱暴に差し出す。



「あげる」



あれ、なんか違う。

こんなんじゃなくて、もっと優しく渡したかったのに。想像と違う。

実唯と玲音もそうなのかない。想像通りにいかないし、思い通りにならない。

わたし今、実唯気持ち、少しは分かってあげられてるのかも。

だって今、透になにがなんだか分からないという顔をされて、どこでもいいから落とし穴に入りたいくらい恥ずかしい。こわい。

でも、



「きのう、家の前まで荷物持ちしてくれてありがと」



わたしを【好きな子】だと言った、この人から目を逸らすのは、



「まだ好きか分からないけど」



俯くきっかけになるだけだ。



「……仲良くなりたいって思った。」


「ふつうに」

「目見て話せるぐらい」



もっと近くで。



「…………」



シーンという効果音がこういうときこそ本当に使われるんだと、わたしは身をもって知った。