俺から瞳、逸らさないでね





「はあ……はあ……今日でラストおお!悔いだけは残らんように。……行くぞおお!」

「おおう!」



門を抜ける前にイヤホンを外すと、聞き覚えのある声がして振り向く。

きのう底が抜けそうな紙袋を抱えて、部活の先輩と後輩にチョコを配ると言っていた女の子ふたりだ。


……今日も


最後の大会前テンションだなあと思い笑みが溢れる。


太陽に照らされたいつも通りの朝。

けど、いつもと違うのは……



「コトおはよう!……持ってきた?」



大切に気を遣いながら持ってきた小さな小さな紙袋。



「うん……いちおう、」



きのう空が暗くなるまで作り直したチョコケーキ。

まあ、実を言うと二人ともお菓子作りが壊滅的だった……っていう、



「ぁ……」



実唯が小さな声を漏らし、視線をあげる。

やっぱりその目の先には玲音。

バチッと目が合い、実唯が立ち上がろうとしたところで、玲音は気まずそうに目を逸らした。

それがショックだったのか、実唯はストンとまた椅子に腰をおろす。

どうやら昨日のあだこだがこじれて、長引いているらしい。