俺から瞳、逸らさないでね





「ふん、ふふん、ふふん♪」



ご機嫌にカチャカチャ材料をかき混ぜる実唯の横で、水こぼしたり、なにもないところで滑ってつまづいたりしてるわたし。

なにこれ。いつもと逆じゃん。



「コトはなに作んの?」

「……」

「あぁ、あー!コト!口から滝みたいに水でてる!!」

「あぁ……ごめんごめん」



なに作る?って……



「作んないよ。実唯の手伝うって言ったじゃん」



実唯はお菓子作りが壊滅的だから、わたしがなにか手伝えることがあったらとおもって家に呼んだの。

料理はできるのが不思議だけど……



「ええ……あんなに、アピール、されたのに……あげないの……?」



わざとらしく、コテンと小首を傾げて笑う実唯がムカつく。



「ふふへ」

「……知ってたの」

「ううん、途中で気づいた」

「え、今日?」

「うんうん」



……そんな要素……あったか……?



「……薄々気づいてはいたけど……コトって鈍感だよね」

「あんたに言われたかないわ」



げしっと頬を指でおすと、実唯は楽しそうに笑った。