透は意地悪く微笑み、私達に材料の入った袋を丁寧に渡してあっけなく背中を向ける。
「ええ、……透くん帰っちゃうの?」
実唯の声に立ち止まった透がこちらを振り返った。
「一緒に作ろうよぅ」
ドクッ。
実唯の言葉ひとつ聞くたび、変に緊張する。
いまだけじゃない。
今日ずっと、ドキドキしてる。
「ごめんね」
「最後まで側で応援できなくて」
だって、透の好きな人って……
「でもさすがに好きな子の家に入るのは、」
「……緊張しない?」
「わ、……っ、わかるううぅぅぅ」
「じゃ、……がんばって」
「隣で応援できないけど、家で応援してる。……片想い同盟同士」
「うんっっ」
いやいやいや、まてまてまて。
「んふふ……こと。……つくるよ(圧)」
「まってまってまってっ」
グイグイ腕を引っ張られ、鍵をぶん取られて家に連れ込まれる。いや、自分ちなんだけど。
透の好きな人って……実唯じゃないの?


