「もうバレンタインなんかしない。やめる。このまま帰る。」
「……いや歩けないから」
僅かな希望を抱き、助けを求めて透に目をやる。
透はおじさんが消え去った方向をじーっと睨み、首の後ろに手をやっていた。
「ね、……どうしよっか。明日校長にチクって周辺強化警備してもらおうか。」
透の首がポキっと鳴り、不敵にわらう。
なになに、……このふたりの方がこわいこわい
結局なんだかんだ三人一緒に買い物をして、結局なんだかんだ、透は家の前までついてきた。
もうここまで来たら、帰ってよなんて言えるわけない。
「じゃ、俺はこのへんで」
「…………へ。」
もう家に入れる気満々だったわたしは鍵を片手にかたまる。
それを見た透がおもしろいおもちゃを見つけたかのように口角をあげた。
「コトちゃんが俺にいてほしいって言うなら、」
「言ってない」


